ケース①59歳女性
患者病歴:10年前よりお茶をしているため正座することが多かった。2年前に左膝が痛み、座っているのが辛くなる。その後、1年前より右膝痛が発生、現在は、階段昇降、正座、立った状態での屈伸、座る→立ちの動作で右膝の前方内側に疼痛あり。整形外科ではⅩ線検査で変形性膝関節症と診断されヒアルロン酸注射を一年間継続(月に一回)するが、症状の変化なく当院に来院。
臨床所見:靭帯、半月板の整形外科テストは、陰性。視診では右膝は、左膝に比べ、膝蓋骨周辺に軽い腫れがあり、屈伸や座り立ちの動作で痛み再現される。院内での歩行は問題なし。
仮説:整形外科でのX線診断と視診・触診・症状からも軽度のOAと判断する。
施術方針:初めに大腿と下腿後方筋群の拘縮を取り除くようにする。膝裏部に関しては、軽く牽引を加え、関節腔が開くようにしながら膝裏筋群のリリースを行うようにする。また膝蓋大腿関節の可動域改善も行う。その後、大腿四頭筋(特に内側広筋斜頭)の強化を図る。また、大腿四頭筋の内側斜頭強化と膝裏のリリース法についてのセルフトレーニングと歩行指導を行う。
経過:当初週に一度の施術を6回、その後遠方のため2週に一度ぐらいのペースで施術行う。徐々に回復し、施術12回時にVASが10分の3程度に改善する。その後3回程の施術でVASが1に改善した。同時に可動域も改善し、立位での膝の屈伸が可能になる。
施術計画修正:計画修正は当初足底アーチを作るために、セラバンドを使用したエクササイズを処方するが、効果があまり見られないのと、患者自身がやりにくそうなので中断し、大腿四頭筋強化と下腿筋ストレッチだけにフォーカスした。
結果:関節腔を開きながらの大腿四頭筋(内側斜頭)の強化と膝裏の筋リリースの効果は、変形性膝関節症には欠かせない治療と判断する。治療開始後1年経過後に再来院するがセルフトレーニングも継続できていて経過良好である。
考察:この女性は茶道をしていたので、過度屈曲位が多かったのも原因の一つとして考えられる。軽度のOAについては、3か月以内に効果が出る感触がある。但し、自宅でのセルフトレーニングは欠かせないと判断する。また、関節の腫れが強く出ている場合などは、炎症を抑えるための冷却もしくは薬物療法との併用が必要と考える。また歩行指導に置いて、つま先が外旋方向に向いていた癖を改善させた事も効果的だったと推測する。